正しく氷見弁を話そう!

私は氷見弁のネイティブ・スピーカーだと思っていました。


はじめに

■「ローレンス先生」から英語を習っていた時の事です。 ある日、先生を氷見市内に案内したのですが、 「窪の畑のさつまいも・朝日山の神武天皇の銅像・大境の洞窟」 等が、巧く英語で表現できませんでした。
その時から、こう思いました。 いくら、東京やニューヨークの知識が有ったって、 そんな事より、もっと自分のローカルを知ろう、と。 国際人とは「自分のローカルが分かる人」なのですね。

洞窟

■外人からの「あなたは、柔道が出来ますか?」と言う質問は、 日本人なら知っていて当然、と言う思い込みからでしょうね。 富山県人なら、おわら節・むぎや節が歌えるでしょう、 氷見人なら、鰤(ぶり)がさばけて当たり前、と言う風に。

■例文として「私の住所は氷見です。」を挙げて試ます。 日本人にとっては、特に違和感が無い文章だと思いますが。 ところが、英文では「My address is Himi.」とは言わないそうです。 「I am located in Himi.」なのです。 つまり住所とは郵便番号では無く、ロケーション(在所)なのですね。

■ところで、例文は氷見弁には翻訳不可能なのです。 と言うか、現実的にはそんな会話は有り得ないからです。現実には、 「あんたうち、どこけ?」・「おらうっちゃ氷見やけど。」 氷見弁で住所とは、住んでいる内・家(うち)なのです。 「I am located in」における「in」の究極形なのです。
従って「どこのざいしょ(在所)のもん(者)や?」・「おら(俺)け?」 の様な氷見弁の方が、よっぽど英語に近い感覚だと思うのです。


関西弁と富山弁について

■「駄目」な事を、関西・北陸・富山弁で「あかん」と言いますね。 古語の「らち(埒)が開かぬ。」の省略形だそうです。らち(埒)とは、
・馬場の周囲に設けた垣
・物事の限界・秩序
だそうです。(広辞林から。)

■氷見弁では、この「らち(埒)が開かぬ。」から転じて「あかん」の他に、
・だちゃかん、だちかん
・だしゃかん、だしかん
等と、色んなバリエーションが有ります。

■蛇足ですが、「駄目」は囲碁の「駄目潰し」から来ているので、 正しい氷見弁(?)としては、
・「あかん」→無秩序・不可能
・「駄目」→無駄・無益
として使い分けるべきでしょうね。(強制はしません!)

■語尾に「…ちゃ」を付けると富山弁らしい、と言います。 でも「…ちが」とか「…ちん」を付けると、氷見弁らしくなります。

■これは、関西弁の「あかん(駄目)のとちゃう(違う)か?」 が原形と思うのですが。(英文の付加疑問文:is not it?)


どれが氷見弁かな?

キットちゃん

■私は氷見弁のネイティブ・スピーカーだと思っていました。 しかし、勤務先が高岡・福光・福野・新湊と変わるにつれ、 どれが氷見弁だったか、分からなくなってしまったのです。

■でも、「古い・短い・速い!」が正しい氷見弁でしょうね。例えば、 「それで良いのでしょうでは、無いのでは無いでしょうか?」 こんな代名詞・推量・付加疑問の羅列では、氷見人には分かりません。 「そっで、いいなかぃ!」と。


サウンズ・チェンジェス

■何年も英語を習ったのに、英語が話せない理由の一つに「サウンズ・チェンジェス」があります。
「氷見弁が分かり難い。」と言う方は、絶対に外国語は話せません。 ところが、氷見の飲み屋で働いている外国人女性は、観光ビザが切れる頃になると、 涙が出るほど、見事な氷見弁を話すのです。

■取り敢えず説明しなくても良い主語は、省略しましょう。
「あなたは、何をしているのですか?」→「何〜しとんが?」

■助詞(てにおは)は、徹底的に省略しましょう。
言語が未熟なための欠落では無く、洗練された省略なのです。 決して「赤ちゃん言葉」や「インデアン嘘つかない。」なのではありません。
「私は、あなたを愛しています。」→「あんた、好きや。」

■文法にこだわらず、出来れば体言止めを考えましょう。
文法より大切な事は、会話が成立するためのキーワードと抑揚なのですから。 前例の「な〜に?」は、疑問の他、「脅迫」にも使えますよ。
用言で止めると、「だから、どうした?」と反発の感情が湧きかねませんが、 「あんた!」で止めると、「えっ、どうしたの?」と同情される場合が多いのです。
「犬、走った。」→だから、どうした?
「あっ、犬!」→ホンマや、でかいのう。

■立派な固有名詞が有るに、代名詞でごまかしてはいけません。
キリストもおっしゃっています。「人は名前えを呼ばれると、嬉しいものだ。」と。
「あんた!」→「ねえ、トシオ。」


アクセント

■東京弁は雪が少ないので、アクセントを間違えています。(冗談ですが。) 氷見弁は「ゆき」の「ゆ」にアクセントが有ります。
例の「京都ぼんと町に降る雪も、雪に変わりは無いけれど…。」 の歌は支持滅裂ですね。

■「雪」とか「橋」、「犬」とか「夏」とかの「い・う」で終わる二音節の名詞は、 富山弁では、最初にアクセントが有るのです。 この点では関西弁に近いのかも知れません。 でも、「川・池・音」など「あ・え・お」で終わる名詞は東京弁なのです。 (真田信治「方言の日本地図」2002)

■かと思うと、「橋」と「箸」ではアクセントが違うのです。 結局、正しいアクセントは、氷見のネーティブ・スピーカーに学ぶしかないのでしょうか。

氷見弁の理解度テスト

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■クリックするとアラート・ボックスが表示されます。(各級10問中8問正解で合格)


和氷辞典・和氷翻訳

■運が良ければ(と?言うか、辞書が貧弱なので!) 懐かしい氷見弁に翻訳・変換します。

■例えば「皆様、お元気ですか?」と書き込んでみて下さい。 ページ内の文章を適当に「カット&ペースト」しても良いでしょう。

大阪弁変換を使いました。

ここに↓文章を書込み、[変換]ボタンを押して下さい。


氷見弁の短信

■先日(H17-10/30)友人のご子息さんの学校祭に、お声が掛かったので出向いてみました。 現在の学校区こそ違え、私にとっては懐かしい母校なのです。

辞書

■ご子息さんは氷見クラブの家族会員なのですが、 そこには「西條地区再発見」というブースが有り、 氷見弁研究など身近なテーマで、カラフルに展示されていました。 この時分から方言に興味が有れば、アイヌ語のように絶滅危惧に晒されることは無かろう、 と私は妙に感動しました。


おわりに

■例えば、外国では「貰った馬の歯を見るな!」と言う諺が有ります。 歯を見て値踏みをしては、馬を送った人に対し失礼だからです。 日本では、さしずめ「貰い物にケチをつけるな!」でしょうね。

■答え難い質問の答として、 「それはね、鴻の鳥が運んできたのよ!」と言うのが有りますね。 私が幼い時には、母から「向かいの新川から、流れて来たが!」 と、言われました。あなたの地区ではどうですか?

■東京での仕事中に「あなたは北陸の出身ですか?」と尋ねたら、 「いいえ、高知です。」と。それにしても、氷見弁に似ていた。 この話を、ある人に言ったら、「言語の波紋現象かも?」と答えました。 (方言周囲論:柳田国男「蝸牛考」1930)

■「万葉集」や「源氏物語」は、関西弁では無いのか? 「能:のう」や「謡:うたい」、神主の「詞:のりと」も。 と、友人に質問したのですが、誰も相手にしてくれませんでした。


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